心臓と腎臓(心腎連関)

一見違う臓器で働きも異なりますが、実は密接に関わっています。心臓と腎臓は、循環血液量の調節、ポンプ機能、利尿作用など共通の生理的な役割を持っています。今まで獣医領域において、心臓と腎臓は臓器別に病態を捉えた治療が行われてきました。しかし近年、疫学調査により慢性腎臓病が心臓病の危険因子の一つであることが報告されました。また、当院でのデータにおいても僧帽弁閉鎖不全症の症例で腎機能低下を合併していると予後が悪いことがわかっています。このように心機能低下と腎機能低下が相互に悪影響を及ぼすことが知られ、これを心腎連関と呼ばれています。今後は心臓病と腎臓病を同一の基盤で捉えた診療体系を構築する必要性が考えられはじめています。

【心腎連関のメカニズム】

心腎連関のメカニズムは、心臓病、腎臓病による血行動態の異常に加え、レニンアンギオオテンシンアルドステロン系の活性化、交感神経系、高血圧、酸化ストレスなどの神経体液性因子が関わっており、これらが相互に作用し悪循環を形成しています。

当院では僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする心臓病の症例に対して常に腎機能を意識し、慢性腎臓病をはじめとする腎臓病の症例に対して常に心臓機能を意識することを心がけています。また治療に関しても心臓と腎臓の双方を意識した治療を行なっています。しかし、何よりも心臓病の治療中に腎機能低下してきていること、腎臓病の治療中に心臓機能が低下してきていることの早期発見、早期治療が重要です。

心臓及び心血管系の機能低下 (Pouchelon JL, et al. 2015の論文を改変)